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ビジネスチャット「Chatwork」、DXによる医師の負担軽減に関する調査を武蔵台病院と共同で発表

医師のPHS着信回数が80%減、ナースコール呼び出しも約40%減など、生産性や患者ケアの質が向上。看護師の勤務交代時の申し送り時間がゼロになるケースも

株式会社kubell(本社:東京都港区、代表取締役CEO:山本 正喜)はビジネスチャット「Chatwork」において、医療法人和会 武蔵台病院(所在地:埼玉県日高市、理事長:河野 義彦、以下、武蔵台病院)と共同で実施した「DXによる医師および医療従事者の負担軽減とその効果に関する調査」を公開しました。

今回の調査により、チャットツール等のICTツールを活用することで、医療従事者間の情報連携が効率的・効果的になり、医師および医療従事者の負担軽減が確認されました。また、生産性向上により入院患者のケアや見守りの時間が増加したことで、医療の品質が向上したことも明らかになりました。

【武蔵台病院の取り組み・結果サマリー】
・院内の連絡基盤を電話・紙を中心とした運用から「Chatwork」に変更。医療/看護体制における効率化を実施。
結果、医師のPHS着信回数は約85%減、約16.4分/回かかっていた看護師の勤務交代時の申し送り時間がゼロになるケースも。
・患者をケアする時間が増えたことで、ナースコールでの患者からの呼び出しは約40%減、褥瘡(=床ずれ)発生率0%の達成など、医療品質の向上を実現した。

医療業界を取り巻く背景

医療業界では、医師の長時間労働是正のため、2024年4月の労働基準法改正により「医師の働き方改革」が施行されました。一定のルール下で医師の労働時間を制限する*1 ことで、働き方改革を推進する目的です。
一方で、高齢化や地方や過疎地域での慢性的な医師不足による医療ニーズは増加しています。医師の需要に対して供給が追いついていない状況にあります。

また、2024年6月の診療報酬改定では、患者本人の意思を尊重し一人ひとりに合わせた支援をすべきとする「意思決定支援」や、患者の尊厳を守るために「身体拘束の最小化」*2 に取り組んでいるかどうかを問われる内容が盛り込まれ、医療品質の向上および患者の意思・尊厳を守る丁寧なケアが求められていることが示されました。

このように、医療に関して解決すべき課題は多く、医師をはじめとする医療従事者の働き方改革と医師不足の両方を解決しながら、医療品質を向上する方法が模索されています。

武蔵台病院におけるDX推進の取り組み背景

埼玉県日高市にある武蔵台病院は、整形外科、内科、リハビリテーション科などの全15科、病床数約100床を有する地域密着型の病院です。救急医療から急性期治療、慢性期治療ならびにリハビリテーション、訪問看護等の在宅医療関連のサービスを提供しています。

2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行に際し、スタッフ間のコミュニケーションと情報共有の円滑化のため、「Chatwork」の利用を開始しました。その後、医師の働き方改革に備え、「Chatwork」やモバイル電子カルテなどのICTツールを活用することでDXを推進し業務効率化を推進してきました。

DX推進の取り組み>
2020
4月:「Chatwork」フリープラン(無料)を全職員約300名で利用開始
2021
10月:「Chatwork」のプランを有料プランに切り替え
2022
11月:医療/看護体制の見直しに際し「Chatwork」の利用方法をアップデートし、申し送りなど日々の業務連絡への本格活用を開始
2023
5月:モバイル電子カルテを導入

取り組み1:院内の連絡基盤を「Chatwork」に変更することで情報共有の生産性が向上

<課題>
医師や看護師、その他スタッフ間での情報共有や勤務交代時の申し送りなどは、口頭や電話、紙で行っていました。口頭では記録が残らず、電話では患者の処置中は対応ができず何度も折り返し対応が発生したり行っている作業が中断されるなど、生産性に課題がありました。

<取り組み>
院内の主な連絡手段を「Chatwork」に変更しました。送信者は事象が発生したタイミングですぐにメッセージを送信でき、受信側も自身の手が空いたタイミングで確認できるため、不急の連絡によって患者対応や作業等を中断する必要がなくなりました。

<成果>
これにより、医師一人当たりのPHS平均着信回数は31.5回/日から5回/日となり約85%減少(26.5回/日)しました。PHS平均発信回数は23.3回/日から2.1回/日となり約90%減少(-21.2回/日)するなど医師の負担軽減の効果がみられました。(回復期病棟を担当する医師4名の2022年10月と2024年5月の1日当たり平均比較)

03_[FIX]医師のPHS着信・発信回数(1日平均).png

また、医師による入院患者への回診は、約36.7時間/月かかっていたところ、回診に必要な情報を事前にチャットで連絡することで、2024年5月には約22.1時間/月となり、約40%減少(-14.5時間/月)したことがわかりました。(回復期病棟を担当する医師4名の2022年10月と2024年5月の回診時間月間総合計比較)

02_[FIX]回復期病棟の医師4名の回診時間(月間平均).png

さらに、夜勤看護師から日勤看護師への交代時の申し送りを紙・口頭からチャットに変更したことで、1回あたり平均16.4分かかっていたところ申し送り時間ゼロを実現。また、日勤看護師から夜勤看護師への申し送りにおいても、大幅な短縮効果が出ています。(一般病棟における2022年10月と2024年4月の1回当たり平均比較)

04_[FIX]回復期病棟の申し送り時間(1回平均).png
取り組み2:医療/看護体制をアップデートしたことで患者ケアの時間が増え、医療の品質向上を実現

<課題>
元来、看護師は一箇所のナースステーションに常駐し、必要に応じて病室の見回りやナースコールに対応していました。普段、患者は目の届かない場所にいるため、病状によっては転倒防止のための抑制帯(ベッドや車椅子に身体を固定する帯)を利用する必要がありました。しかし抑制帯は、患者の安全が確保できる利点がある一方、リハビリテーションの機会を阻害したり、患者の意思や尊厳を損なうものとして可能な限り利用を低減させることが推奨されています。*2
このように、医療品質向上のためには、患者の見守り時間やケアする時間を増やす必要がありました。

<取り組み>
そこで医療/看護体制の見直しを行い、看護師を複数の場所に点在させることでより患者に近い場所で業務ができる体制にアップデートしました。また「Chatwork」を活用することで、離れた場所にいても情報連携のスピードや質を落とさずに対応することができました。

<成果>
患者を直接見守る時間が増えたことで、2023年12月には抑制帯の使用率0%を実現しました。また、寝返りなどの体位変換を頻繁に実施できるようになり、2023年7月に褥瘡(=床ずれ)発生率0%を実現しました。これらは現在も0%を継続しています。(2024年9月末時点)


さらに、患者からのナースコールでの呼び出しは、平均259回/日から平均150回/日へ約42.0%減少-109回/日)しました。(一般病棟における2022年10月と2023年10月の1日平均比較

05_[FIX]抑制帯使用率.png

06_[FIX]褥瘡発生率.png

*1 2024年4月より、働き方改革として医師の時間外労働時間が原則年960時間、月100時間未満に制限されています。特例として、三次救急医療機関や規模の大きな二次救急医療機関など地域医療体制確保の観点で重要な医療機関(B水準)や、医師の育成等を行う研修機関での中的技能向上水準(C水準)が認められる場合には、医師の時間外労働時間は年1,860時間、月100時間未満までの制限に緩和されている。
*2 抑制帯の利用などを含む「身体的拘束の実施」は、転倒防止などの安全策として必要な処置である一方、患者本人の意思や尊厳を守る丁寧なケアを行うためには、可能な限りその実施を無くしていくことが望まれるとされている。2023年10月の厚生労働省「入院・外来医療等の調査・評価分科会これまでの検討結果」(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001161670.pdf、p23)によると、ほとんどの病棟・病室において身体的拘束の実施率は0~10%未満(0%を含む)が最も多いものの、急性期 一般入院料、地域一般入院料、地域包括ケア病棟入院料ではその実施率は約5割にのぼる。さらに、身体的拘束の実施率が50%を超える病棟・病室も一定程度あることがわかっている。

振り返りと今後の展望

医療法人和会 理事長/整形外科専門医 河野 義彦氏


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「Chatwork」利用のきっかけは、コロナ禍でスタッフの心理的安全性を確保するためのコミュニケーション手段としての採用でした。利用を進めていくうち、業務効率化や医師の負担軽減につながると感じ活用を推進した結果、医師への情報伝達が効率化され回診時間や申し送りにかける時間などが削減できました。また医療/看護体制の見直しにあたって、なくてはならないコミュニケーションの基盤となりました。現在、当院では専門部隊としてDX推進室を設置しモバイル電子カルテを導入するなど、その他のDXも推進しています。また、各種学会での導入成果発表や、他院からのDX施策に関する視察受け入れなど、院外にもDX推進の意義をお伝えしています。今後は人口減少時代でも医療介護の質を落とさず、地域の医療介護を維持して次世代へのバトンを渡す事を目指しております。

調査概要

・調査名称:武蔵台病院におけるDX推進効果・実態調査
・調査方法:武蔵台病院による目視・PHSデータ等の計測
・調査期間:2022年10月〜2024年9月末
・調査対象者:武蔵台病院に勤務する医師・看護師・その他スタッフおよび入院患者
・調査主体:武蔵台病院

※本調査をご利用の際は、『株式会社kubell「2024年10月 武蔵台病院におけるDX推進効果・実態調査」』と明記ください

医療法人和会 武蔵台病院について

所在地:埼玉県日高市
病院概要:整形外科、内科、リハビリテーションなど全15科
従業員数:225名(うち非常勤54名) ※2024年9月30日時点
病院ホームページ:https://www.musashidai-hp.com/

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